「変じゃない?」「自分の目で、見てみなよ」

福笑い
2月 18th, 2012
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牛の福笑いをしている女の子。なんだかうまくいかずに、牛の顔が崩れています。でも、こんな顔になってしまった牛が、実際にチェルノブイリ原発事故の影響で、生まれてしまいました。
放射能の影響は、人間だけに降りかかるものではありません。原発近くから逃げ出すことのできない動物たちは、その影響をモロに被ってしまうのです。このページでは、そんな放射能の動物に対する影響をまとめました。

*もくじ

1. チェルノブイリ原発事故後の動物たち
2. 福島第一原発事故後の、動物たち
3. 取り残された、家畜たち


チェルノブイリの森は、動物たちにとって、聖域化した楽園なのでしょうか。
それとも入ったが最後、二度とは出てこられない、まるで麻薬のような汚染区域なのでしょうか。
チェルノブイリの中心に、赤褐色に染まった森があります。通称”赤い森”と呼ばれるこの森は、1986年の原発事故後に木々を枯らしながら通り過ぎた有害な放射線物質の影響で、25年たった現在でも人の立ち入ることのできない場所となっています。

発電所とプリピャチ市をつなぐ陸橋(2005年)

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/chertour/Osma.html

そんな土地に、動物たちが集まり始めました。オオカミやイノシシ、ヒグマやシカといった一般的な動物の他に、希少種であるワシミミズクやオジロワシ、モウコノウマといった動物も確認され始めました。農業や工業、狩猟といったヒトの活動がなくなったことが結果的に動植物に良い影響を与え、数々の絶滅危惧種まで繁殖していたのです。2006年には、専門家によって「生物の多様性に関して類のない聖域となっている」とまで報告されています。

しかし、ここに疑問を投げかける科学者たちもいました。彼らの研究によれば、最も調査が進んでいる鳥類については、種の多様性は50%減少し、最も汚染の激しい地域では近隣の低汚染地域と比べて個体数が66%も減少しているとしています。さらに、中程度から高程度の汚染地域では、突然変異率も発生異常率も大幅に高く、生存率と出生率は低いと結論付けました。つまり、ヒトの影響から逃れてこの赤い森に入ったが最後、目に見える豊かな自然を享受し依存していくうちに、目に見えない放射性物質に蝕まれていく、まるで麻薬のような森だということです。

奇形の牛

http://gigazine.net/news/20070426_chernobyl_visit/

どちらの主張が正しいのかは、わかりません。鳥類に悪影響が出ていると主張する科学者に対して、調査方法の欠陥やデータの改ざんなどを指摘する科学者も複数存在するなど、現在でも議論の的となっています。

しかし、どちらの立場を支持するにせよ、共通して「この森に人間が住むこと」に反対していることには変わりありません。動物たちにとって聖域となっているのであれば、人間が排除された野生動物の保護区域として維持し続けてほしいはずです。一方、麻薬のように蝕まれ突然変異を促す要因が残る環境となっているのであれば、そこに長く暮らした場合に人間が健康でいられるのか危険なため、立ち入り禁止を維持し続けてほしいはずです。

人間が自らの手で汚し、手放したこの地と、そう都合良く元通りの関係に修復することは、もはや叶わないのです。

今回の福島原発事故とチェルノブイリの原発事故とは、容易に比較できるものではありません。しかしながら、福島の未来を予想にするにあたって大いに参考になることもたしかです。
今から25年後、「仕方なかったんだ」なんて言わないで下さい。仕方なくなんか、本当はないんです。今できることは、なんなのでしょうか。

*参考

http://wired.jp/2011/06/03/
http://gigazine.net/news/20070426_chernobyl_visit/
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/chertour/Osma.html
http://www.scj.go.jp/ja/event/houkoku/pdf/110628-houkoku4.pdf
http://cricket.biol.sc.edu/chernobyl/papers/Mousseau-Moller-Bull-Atomic.pdf


悲しそうな牛がいます。それは、福島県のとある牧場のはなし。自分自身の糞尿にまみれ、身動きが取れなくなった悲しそうな、牛がいます。

なぜその牛は、自分自身の糞尿にまみれているのか。ほんらい牛の糞尿は、堆肥として地元の農家のひとたちに再利用されていました。無駄がでないように、ひとつのきちんとしたサイクルができあがっていたのです。

しかし、原発事故はそのサイクルを止めてしまいました。牛の餌が汚染され、それを食べた牛の糞尿すら「放射性物質」になってしまった。そんな堆肥を使おうとする農家の方もいないために、サイクルは止まり、牛の糞尿が牛舎に溜まって行くことになってしまったのです。

牛は清潔好きでデリケートないきものであるために、糞尿にまみれて暮らしているということは、物凄いストレスになる。体調を崩す牛たちが増えている。飼い主の方も、いくあてのない糞尿とかなしげな牛たちを前に、ただただ見ていることしかできない。その悲しみは、想像することすらできません。

写真:毎日新聞

このように原発事故の影響を受けて苦しんでいる動物たちは、たくさんいます。放置され、牛舎で腐って行った牛や豚、馬。共食いし、死に絶え、白骨化してしまった犬や猫たち。もちろん飼い主であった人たちの悲しみだって、その動物たちと同じ分あるのですが、それ以上に動物たちはいったい何を思っているのでしょうか。

こんな話もあります。アラスカで、大量のアザラシたちが原因不明の奇病に苦しんでいるのです。全身から毛が抜け、皮膚の炎症や出血してし、ときには死んでしまったアザラシが、数十匹海岸に流れ着いている。しかし、ウイルス性の病気ではなかった。

まだ決まったわけではありませんが、地元の研究者たちは、原因が福島原発から大量に流出した放射能汚染水(その量およそ1万トン)にあるのではないかとして、調査をはじめました。

写真:ロイター通信

チェルノブイリ原発事故のあと、事故現場の周辺は人がまったく人が住めない土地になりました。動物はそこに住み着き、いまでは野動物の宝庫とも呼ばれています。しかしいまだに、そこに暮らす動物たちからは、大量の放射能が見つかっているんです。その影響はまだしっかりと解明されていませんが、生体異常が見つかっている翼やねずみも発見されています。

人間は放射能から、できる限り逃げようとすることができます。避けようとすることも、できます。しかし動物たちはそんなこともできず、ただただ汚染され、苦しんで行くばかりなのです。

だからなんだよ、と言われてしまえばそれで終わりです。でも、放射能の汚染というものが、決して人のいのちだけではなく、生物すべてに大きな影響を及ぼしてしまうということを、しっかりと覚えておくこと。それはつまり、もう二度とこういうことを繰り返さないようにするという、気持ちのスイッチにもなるかもしれません。

*参考

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111104k0000m040098000c.html
http://www.msnbc.msn.com/id/45800485/ns/technology_and_science-science/
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104150405.html
http://www.asahi.com/national/update/1206/TKY201112060485.html
http://www.asahi.com/national/update/1124/TKY201111240671.html


人間がいなくなった街に置き去りにされた動物たち。
今、福島第一原子力発電所から半径20km圏内は立ち入り禁止区域となっています。

人間がいなくなった街に置き去りにされた動物たちは、餌もなくただじっと飼い主の帰りを待つしかありません。

うじ虫だらけの豚の死骸。
首が固定されたまま逃げ出すことができずに死んでいった牛。
豚の死骸を食べて生き延びていた豚。

アルピニスト野口健さんのブログに載せられた動物たち。
ある程度の覚悟をもって見たにも関わらず、
私はあまりにむごい現実に目をそらさずにはいられませんでした。

事故前、現在の立ち入り禁止区域には、およそ4000頭の牛、3万頭の豚、63万羽の鶏、100頭の馬がいたと言われています。
立ち入り禁止区域に住む酪農家の多くが手塩にかけて育ててきた「家族」を見殺しにしなければならなかったのです。中には、殺処分を選ぶ人もいました。
結局、家畜たちは生き延びたとしても、体内に放射性物質が取り込まれたままでは、商品として売れる保証はどこにもありません。

放射能から逃げなければならない人間。
そして、人間がいなければ飢え死してしまう動物。
住民の命を助けるために、彼らの犠牲はやむを得ないものだったのだと片付けるのは簡単です。
しかし、何も知らずに死骸に群がるうじ虫でさえ、彼らの死を無駄にしてはいません。

人間の都合に振り回された彼らの死を無駄にしないために、何ができるのでしょうか。

*参考
野口健公式ブログ 「福島第一原発、20キロ圏内の世界」
注意:衝撃的な写真が多いので苦手な方は注意してください。


ここまでで書かれたのは、3人の3つの視点。
あなたの4つめの視点は、なんですか?